作品概要
8年ぶりに帰省した故郷で再会した幼馴染。一週間の夏休みだけの、かけがえのない時間を描く青春同人誌。繊細な筆致と淡い色彩が光る、夏の読書にぴったりの一冊。
管理人のイチオシpoint
セミの声と夕立の匂いがページから立ち上る、稀有な青春同人。商業クラスの画力と詩的なセリフ回しで、読後も余韻が残り続ける。夏の夜に一冊だけ選ぶならコレ。
シーン別レビュー
夏休み最終週、故郷の田舎町に帰省した主人公と、8年ぶりに再会する幼馴染・琴音の邂逅シーン。セミの鳴き声と夏の湿度を感じさせる背景描写が、ノスタルジックな空気を丁寧に構築している。
駄菓子屋の前、縁側、神社の石段。幼い頃よく遊んだ場所を巡りながら、あの頃の思い出を語り合う二人。記憶と現在の琴音が重なる見開きは、本作屈指の美しさ。
花火大会の夜。浴衣姿で現れた琴音の立ち姿に息を呑む主人公の視点。浴衣の柄や帯の結び方まで丁寧に描き込まれた、作者のこだわりが光る重要な場面。
人混みから離れた河原で二人きりになる時間。遠くで上がる花火の光が二人の横顔を照らす。この幻想的な描写は、同人作品として一線を超えた絵作りの完成度を示している。
子供の頃の秘密基地だった小屋での再会シーン。時が止まったような空間で、長年言えずにいた想いが溢れ出す。セリフを最小限に抑えた表情での語りが胸を打つ。
クライマックス、夕立の音と共に訪れる二人きりの時間。幼馴染という関係が大きく変わる瞬間を、作者は激しさではなく慈しみの筆致で描いている。
夜が明け、朝日が差し込む窓辺の静かな場面。昨夜の出来事が夢ではなかったことを確かめ合う二人。余韻を大切にした構図の妙が光る。
夏休み最終日の見送り。電車を待つ駅のホームで交わされる短い約束。「また来年も、ここで会えるかな」という琴音のセリフが、読後にじわじわと効いてくる名場面。